日本へ入国するまでの主な流れ
外国人が日本で働くためには、日本とあなたの国の両方の入国・出国に関する条件を満たす必要があります。
必要な手続きは、認定を受けた送出機関を通して進められます。
国によって手続きは異なりますが、書類の手続きが多いと言われているフィリピンを例に、日本へ入国するまでの主な流れを説明します。

1.認定送出機関との契約(Recruitment Agreement)
日本の会社(受入企業)は、フィリピンのルールにより、フィリピン政府が認めた送出機関を通して人材を紹介してもらい、採用活動を行う必要があります。そのため、日本の会社と送出機関は、人材の募集や雇用に関するお互いの権利と義務を明確にする契約を結びます。この契約は、日本の公証役場で正式な証明(公証)を受けます。
2.MWOへの書類提出と登録
日本の会社は、必要な書類(働く条件などを書いた雇用契約書、送出機関との契約書、求人票など)をMWO(フィリピン海外労働事務所)に郵送し、審査を受けます。そして、フィリピン政府のDMW(海外雇用庁)に雇用主として登録される必要があります。MWOなどに提出する書類は、決められた形式で作成する必要があります。
日本での在留資格認定証明書の取得や在留資格変更の手続き、ビザ(査証)の申請といった手続きのほかに、フィリピン側での手続きも必要です。在留資格認定証明書には有効期限があり、発行日から3か月です。期限が切れないように注意してください。
3.MWOの面接
提出した書類の審査後、日本の会社の代表者または許可された従業員は、MWOに行き、担当者による英語での面接を受ける必要があります。この面接は、行政書士や登録支援機関の人が代わりに受けることはできません。また、必要に応じてMWOなどが日本の会社を訪問して調査することがあります。
4.DMWへの登録完了と求人情報の登録
書類審査と面接の結果、日本の会社がフィリピン人を雇用するのに適切であるとMWOなどが判断した場合、MWOなどから認証のスタンプが押された書類と推薦状が日本の会社に郵送されます。日本の会社は、認定送出機関を通してこれらの書類をフィリピン政府機関に提出します。
DMWで働く条件などが確認され、日本の会社が雇用主としてDMWに登録され、求人の情報が登録されます。DMWへの登録が終わると、提出した雇用契約書のサンプルにDMWの認証スタンプが押され、送出機関を通して日本の会社に返送されます。
DMWへの登録が完了した後、日本の会社はフィリピン人の採用活動を始めることができます。
DMWに登録する前に、求人の募集や面接を行うことは法律で禁止されています。
※ もし日本の会社がすでにDMWに登録されている場合は、送出機関との契約やDMWの登録手続きは不要ですが、登録した条件を変更して雇用する場合や、採用する人数を増やす場合は、求人票の承認手続きが必要です。
5.求人情報の確認、送出機関での面接、雇用契約の締結
送出機関は、登録された求人情報をもとに、条件に合う人材の募集を始めます。
DMWのウェブサイトや送出し機関のウェブサイト、Facebookなどで求人情報が公開されますので、内容をよく確認した後、送出機関に登録し、指定された日時に送出機関で日本の会社の面接を受けてください。
面接に合格し、採用が決まると、日本の会社と雇用契約を結びます。
※ 重要な注意点
求人情報には、働く場所、仕事の内容、働く時間、休みの日、給料、ボーナス、有給休暇、一時帰国ができるかどうか、社会保険、健康保険、税金、さまざまな手当などが詳しく書かれています。
必ずこれらの情報をしっかりと確認し、少しでも分からないことや疑問に思うことがあれば、面接の時に遠慮なく質問して、すべて納得してから雇用契約を結ぶようにしてください。
日本の会社はあなたの能力や適性を見ています。同時に、あなたは日本の会社の働く条件や職場の雰囲気を見る大切な機会が面接です。お互いに納得がいかなければ、採用を断ることもできます。
各国政府から認定を受けた送出機関は、以下のリストで確認できます。
・外国政府認定送出機関一覧
ただし、認定された送出機関であっても、あなたの希望する仕事の種類や分野の求人があるとは限りません。
すでに説明したように、日本の会社は契約を結んだ送出機関を通してのみ、求人の募集や面接を行うことができます。
そのため、今あなたの希望に合う日本の会社が、どの送出機関と契約しているかは分かりません。
日本語能力試験と特定技能評価試験に合格した後、あなたの仕事の種類や分野に強い送出機関をよく調べて、相談することをお勧めします。
今すぐ希望に合う求人が見つからなくても、諦めずにあなたの希望する条件を伝え続けることで、将来的に条件に合う日本の会社の求人を紹介してもらえる可能性があります。また、送出機関によっては、あなたのスキルや経験を積極的に日本の会社に紹介してくれるかもしれません。
6.在留資格認定証明書の交付申請
日本の会社は、地方の出入国在留管理局に、特定技能の在留資格認定証明書の交付を申請します。
在留資格認定証明書が交付された後、雇用契約を結んだあなたに、証明書の原本が郵送されます。
7.ビザ(査証)の発給申請
雇用される予定のフィリピン人は、在留資格認定証明書を持って、フィリピンにある日本大使館でビザの発給申請を行います。
8.出国前のオリエンテーション(PDOS)の受講
日本へ行く予定のフィリピン人は、海外労働者福祉庁(OWWA)が行う、半日程度の「出国前オリエンテーション」を受ける必要があります。在留資格認定証明書の有効期限内に、送出機関を通してオリエンテーションの受講を申し込みます。
その他に、e-regという海外雇用庁の電子登録システムや、PEOSという雇用前のオリエンテーションセミナーの証明書は、海外雇用庁の海外雇用許可証(OEC)を取得するために必要です。PEOSはオンラインで受けることができます。雇用前のオリエンテーションセミナーでは、海外で働くフィリピン人としての条件や権利などを学びます。
9.健康診断の受診
日本へ行く予定のフィリピン人は、半日程度の健康診断を受ける必要があります。
健康診断の申し込みは、送出機関を通して行われます。
ビザの発給申請と出国前オリエンテーションの受講、健康診断の受診は、同時に進めることができます。
10.海外雇用許可証(OEC)の発行申請
OECは、フィリピン側の手続きがすべて完了したことを証明する書類です。
ビザを取得し、出国前オリエンテーションを受け、健康診断を受診した後、送出し機関を通してOECの発行をDMWに申請します。フィリピンを出国する際、空港でOECを提示する必要があります。OECの発行申請時には、在留資格認定証明書が有効期限内であることが必要です。
また、フィリピンの国家試験であるNC2(National Certificate 2)の取得も義務付けられており、OECの申請時に必要になります。
11.航空券の予約と日本への入国
すべての申請が完了した後、(日本の会社が渡航費用を負担してくれる場合は、入金が確認された後)航空券が予約され、日本への入国日が決まります。
日本の空港に到着した際の入国審査で、入国の条件を満たしていると認められれば、日本への入国が許可され、在留資格が与えられます。
12.空港での送迎
日本の空港での送迎は、日本の会社または登録支援機関が行ってくれますので、到着時に慌てずに合流できるようにしてください。
到着する時間にもよりますが、まず働く場所への挨拶を済ませ、次の日からは仕事や生活に必要な手続き、役所での手続きなどが、支援計画に基づいて進められます。
働く会社では歓迎会があったり、研修などを受けたりした後、少しずつ仕事が始まります。
緊張せずに、安全、衛生、健康に気を付けて、日本での仕事を頑張ってください。
決して楽なことばかりではありません。上司や同僚、お客様から注意されたりして、落ち込むこともあるかもしれませんが、気にしすぎず、日本での生活と仕事を楽しみましょう。
フィリピンの海外就労支援と関連機関について
フィリピンは、世界でも有数の海外への出稼ぎ者が多い国です。フィリピン政府は、国民が海外で働くことを積極的に支援しており、1,000万人以上のフィリピン人が世界190カ国で働いています。海外で働くフィリピン人は一般的にOFW(Overseas Filipino Workers)と呼ばれ、彼らからの送金はフィリピンのGDP(国内総生産)の約10%(約4兆円)に相当し、フィリピン経済を支える非常に重要な収入源となっています。
フィリピン政府は、優秀な人材を育成・管理し、海外で働くフィリピン人の権利を守るために、以下の機関を設けています。
・DMW(Department of Migrant Workers): 移住労働者省(以前のPOEA)。海外で働くフィリピン人の権利保護や適正な海外雇用を監督する政府機関です。
・MWO(Migrant Workers Office): 移住労働者事務所(以前のPOLO)。DMWの海外事務所として、日本を含む各国に設置され、労働者の支援や受入企業の審査などを行います。
・TESDA(Technical Education and Skills Development Authority): 技術教育技能開発庁。職業訓練や技能評価を行い、海外で活躍できる人材育成を推進しています。
フィリピンから海外への人材送り出し業務は、フィリピン政府が認定した送り出し機関のみが行うことができます。このように、フィリピン政府は国際的な基準に対応した制度やルールを整備しているため、他の国と比較して海外での労働に関するトラブルは少ないと言われています。
また、フィリピンでは特定技能労働者の場合、NCⅡ(National Certificate)という国の資格を持つことが義務付けられています。これにより、該当する分野において専門的な教育を受け、資格を持たない他の国の人材との差別化を図っています。
DMW(移住労働者省)について
DMW(移住労働者省)は、海外で働くフィリピン人の権利を守るためのフィリピン政府の機関です。フィリピン人が海外で働く前に、働く予定の日本の会社(受入企業)が適切かどうかを審査します。受入企業の登録情報や、会社とフィリピン人労働者の間の雇用契約の内容が適切であるかどうかが確認されます。
日本で手続きを行う場合は、DMWの海外事務所であるMWO(移住労働者事務所)で行います。
MWO(移住労働者事務所)への主な提出書類
書類を提出する際は、返信用レターパックを同封してMWOへ郵送する必要があります。主な必要書類は以下の通りです。
・申請フォーム SSW Form No.06-2019V1(Annex E)
・日本の監督官庁などが発行した営業許可証など(翻訳者の署名がある英語の翻訳が必要です)
・会社の概要(フィリピン人の従業員数、代表者名、事業内容、会社の財務状況など)
・SSW Form No.02-2019V1(Annex D), SSW Form No.02-2019V1(Annex D1)
・会社の登記簿謄本(翻訳者の署名がある英語の翻訳が必要です)
・労働者の仕事内容、義務、責任、および同じ種類の仕事をしている日本人従業員の給与額を証明する書類 SSW Form No.01B-2019V1(Annex C2)
・日本の受入機関とフィリピンの送出機関(Sending Organization)との間の採用に関する契約書(公証役場で正式な証明を受ける必要があります)
・送出機関のライセンスのコピーと、送出機関のオーナーのパスポートのコピー
・日本の受入企業のオーナーまたは代表者のパスポートのコピー(代表者以外が署名する場合は委任状が必要です)
・募集する仕事の概要、募集人数、仕事ごとの給与額などを記載した求人票 SSW Form No.01-2019V1(Annex C)
・給与明細 SSW Form No.01-2019V1(Annex C1)
・雇用契約書(Annex B)
・その他、状況に応じてMWOが指定する書類